”ドーフィネ地方(仏東南部)のアルプス、オワザンチク。ラ・メージュの高峰へ、その三つの氷河を目指して昇っていく…。”

20世紀を代表する作曲家の一人、オリビエ・メシアンの代表作の一つ”鳥のカタログ” 1曲目『キバシガラス』の解説文の冒頭です。

今年の夏は、まさにその、ラ・メージュで行われている「メシアン音楽祭」のオープニングコンサートで『キバシガラス』を弾きました。 朝起きて、ホテルの私の部屋の窓から見えた景色は



まさしくメシアンの解説に出てくる景色そのもの! コンサート直前の、最高のインスピレーションとなりました!


音楽祭が行われた教会。 ちなみに、ピアニストが日本人だと知った。レストランのシェフが出して下さったサラダ


July 31, 2013
Photoshoot in Amsterdam
 

”目をきちんと開きましょう”というのは、取材で撮影される時には自分でも意識してきました。
それが、一流の写真家に〝口を意識して”と、言われ、さらにその写真家がシャッターを押すと、このような写真が出来上がります。

そうです、これは確かにワタクシでございます!
10月に発売になる新しいCDなどに使用する写真を撮りに、アムステルダムへ行ってきました。

自転車大国オランダということで、私も自転車で撮影に向かいましたが、あちらの自転車の大きさは、なんとオランダ人サイズのXXL!なかなか足がペダルに届かず大変でした。

カメラマンは、沢山の有名なクラシック音楽家を撮影しているオランダの写真家、マルコ・ボルググレーべさん。
彼は、幼い時にはクラシック・ギタリストを目指していましたが、怪我をしてしまい、写真家に転向したそうです。
今や世界中で仕事をしていますが、朝は幼い3人の子供の寝起きの顔を見たいので、なるべくアムステルダムを離れないという子煩悩でいらっしゃいます。

撮る写真にもその暖かい人柄が出ていますが、同時に、音楽家一人一人の特徴、一瞬の表情をとらえ、さらにそれに合った雰囲気を見事に作り出します。
今後のコンサートのチラシや、プログラムに、新しい写真が登場すると思いますが・・・新しい児玉桃もどうぞよろしく!

写真家のマルコ・ボルグレーべ氏と、ヘア・メイクのサンネさん

マルコさんのサイト
http://marcoborggreve.com


July 19, 2013
Some News
 

5月29日、パリのシャンゼリゼ劇場で、芸術の世界での大イベントがありました。
ストラビンスキー作曲、二ジンスキー振付の”春の祭典”の100周年を祝って、同じ舞台で同じ演目の再現があったのです。
当時はその斬新な音楽と振付に対し賛否評論で、劇場では大スキャンダル!公演の最中に椅子を投げるお客さんもいたそうです。
100年が経ち、世界中で演奏されて今や“古典”となったこの作品ですが、今見ても聴いても、やはり天才的な発想や表現は新鮮で、色々と考えさせられます。
実は、私もこの”春の祭典”を姉と2台のピアノでよく演奏しています。
そして、少しユニークな〝即興付きの春祭”を、素晴らしいジャズピアニスト、小曽根真さんとも演奏しています。
初演から100年もの間にこの音楽に振り付けをしたバレエ振付師は、有名なモーリス・ベジャールをはじめ、100人以上もいると言われていますが、これからもきっとさまざまな形で、色々な芸術家にインスピレーションを与え続けることと思います。

100年前のちらし
6月には、初めて英国のスコットランドへ行きました。
日本を代表する作曲家、細川俊夫先生のピアノ協奏曲〝月夜の蓮”を、ロイヤル・スコッティシュ・オーケストラとともにCD録音するためです。
北国独特の、冷たくて美しい光が夜中まで町を照らして、録音終了後のスコッチ・ウイスキーは、特別美味しく感じました!

録音の風景 http://www.youtube.com/watch?v=VPwHD1XyPrQ 

その後日本に飛び、水戸芸術館で〝ドビュッシー・シリーズ”の最終回を、ホールの素晴らしいスタッフとお客さんに暖かく見守られた中で、めでたく終了、 岐阜の素敵なクララザールでのリサイタルを終え、パリに戻りました。
シーズン最後のコンサートは、フランス、トゥールの音楽祭での演奏。 ここは有名なピアニスト、スヴャトスラフ・リヒテルが30年近く音楽監督をつとめ、歴史に残るリサイタルや室内楽コンサートが沢山行われた場所。

 

18世紀の僧院とその納屋を偶然見たリヒテルが”ここで演奏をしたい”と言った事がきっかけだったそうです。
この音楽祭で演奏するのは、今回が2回目ですが、今回はとても尊敬するドイツのバイオリニスト・クリスティアン・テツラフと共演しました。
テツラフ氏とリハーサル。後ろのステンドグラスはリヒテルです。

さあ、これから夏休み!…といっても、次の勉強と、メシアンフェスティバルでの演奏が待っていますが…その前にアムステルダムへ!!


May 29, 2013
Pianist also has normal life
 

「ピアニストの普段の生活は、どのような一日ですか?」

良く聞かれる質問です。

この春は海を渡る旅行が多く、色々な作曲家の違った曲を沢山弾いていました。
5月には、毎年東京国際フォーラムで行われ、今年で第9回目を迎える「ラ•フォル・ジュルネ•オ•ジャポン『熱狂の日』」に出演。
ユニークで素晴らしいこの音楽祭に、私は第一回目から毎年参加していますが、例年数十万人がコンサートを聴きに来ます。震災の年も延期することなく、今年もまた大成功に終わりました。

同じ音楽祭がびわ湖でも行われるのですが、ここは、美しい湖を臨むホールで、ゆったりとした温かい雰囲気です。
姉との連弾、オーケストラとのコンチェルト、ヴァイオリンとのリサイタル、その合間に練習、リハーサル…と、今年も音楽祭の間、ひっきりなしに弾いていましたが、主催者の素晴らしいケアやお客様の熱烈な雰囲気で、普段では考えられないようなスケジュールでも、楽しみながら乗り越えられます。 

音楽祭の直後には東京文化会館で、マエストロ・インバルの指揮のもと、東京都交響楽団と共にモーツァルトのコンチェルトを演奏させて頂き、今は久しぶりにゆっくりとパリの自宅で過ごしています。

今年のパリの5月は寒く、春がいたずらっぽく、顔をみせては逃げていき、いまだに暖房を入れています。

私の家の前では、年に数回アンティークの市がひらかれます。
 

通りがかりの女性が豚の頭の置き物を手にとって”こんなもの、必要ないのに、買うなんて馬鹿げているよね。でもどうしても買いたいから買うわ。だからお安くしておいてね!”と値切ると、”チャーミングな人には、NOとはいえないよ!”なんて、いかにもフランス人らしい、会話が飛び交っています。
お昼には、折りたたみの机の上に、フランスパンとチーズ、ワインが並びます。 
私は練習の合間に窓から、そんな景色を見たり、展覧会を見に出かけたり、友達たちを招いて、簡単なホームパーティーをしたり…。
ホテル住まいが続くと、自分のベッドに寝て、朝のコーヒを作り、スーパーで買い物をして、お料理をし、かたずけて…といった日常の全てがとても新鮮に感じます。

ピアニストの生活は、少なくともも私の場合、意外と普通の生活なのです!
そして、その貴重な時間が、次の演奏会への準備と、自分自身の充電にもなります。


April 1, 2013
Cherry blossom time with Beethoven – Part II
 

南米のボゴタから、32時間の旅行をして、やっと東京に到着、
ホテルにチェックインし、その足で練習に行きました。

翌日から名古屋でリハーサル。
今回は、トヨタマスター・プレーヤーズと共に、ベートーヴェンのトリプル・コンチェルトを演奏するツアーです。
トヨタマスター・プレーヤーズは、世界でもっとも伝統あるオーケストラのひとつ、ウィーン・フィルハーモ二ー交響楽団のソリストが沢山集まっている室内オーケストラ。大変人気があり、毎年春に日本ツアーを行っています。
3年前にも、このアンサンブルとベートーヴェンのコンチェルト1番でツアーをしましたが、指揮者なしでコンサートマスターがリードをします。
近年ではオーケストラも、世界中のさまざまな文化の中で育った音楽家が集まり、グローバル化をして、ハイレベルで、”国際的”な音を出すようになりましたが、このウィーン・フィルハーモ二ー交響楽団だけは、ウィーンの伝統を受け継いだ音楽家しか入団が出来ないことになっています。
同じ伝統を受け継いだ音楽家が集まると、音に対する理想や、微妙な間の取り方や呼吸が見事に一体となり、ウィーンの香り溢れる、素晴らしい響きが生みだされます。
一緒に演奏するピアニストとしては、とても近い特等席でそれを聴ける上に、
一緒に音楽的対話が出来、本当に幸せを感じる瞬間です!


コンサートの後のお食事 ベートーヴェンのトリプルコンチェルトを一緒に弾いたバイオリニスト シュトイデさん。

ツアーで移動の新幹線で。ふだん何もない上の棚は、楽器で一杯です!


April 1, 2013
Cherry blossom time with Beethoven – Part I
 

日本で桜が咲いていた時期は、私にとってはベートーヴェンの時期でした。

リサイタル、室内楽、コンチェルトと”ベートーヴェンづくし”でしたが、1人の作曲家によるさまざまな形式、時代の曲を弾くことは大変興味深く、作曲家をグローバルに体験することが出来ます。

まずはコーヒーの国、南米コロンビアの首都ボゴタで、第一回国際音楽祭に参加してきました。

ホテルのエレベータのデザインもさすが。コーヒー豆が!

リサイタルの他、大好きなバイオリニスト、オーギュスタン•デュメーさんとのデュオ、そして元気あふれるアムステルダム・シンフォ二エッタ(ファン・アルペン氏指揮)とのコンチェルトと、4日間毎日弾いていました。

オーギュスタン・デュメーさんと楽屋で

南米のお客さんはとても熱狂的。ホール中が笑顔とスタンディング・オベーションでとても盛りあがります。

音楽を演奏する私たちは、演奏する曲目について、つい色々と細かい事を考えすぎるところがありますが、コロンビアの人々のように、生まれて初めて生命力溢れるベートーヴェンを聴いた時の感動、その新鮮な気持ちこそが、何に対してももっとも大事なことだと思ってしまいました。

ボゴタは標高2600メートルと高いところにあり、到着した日は気圧に慣れるまで、皆フラフラしたり、めまいがしたりしていました。
その上、時差と重なると、体調を整えるのが大変。
そこで現地の主催者が出して下さった、有機栽培のハーブティーがこれです。 

コカ茶。

「これは麻薬のコカインではないですよね?」と冗談半分に言うと、「そうですよ!」との返事‼
実は、コカインの葉っぱが、ケミカルに変身して麻薬になる前の状態で作るお茶だそうです。
どこのスーパーにもあり、現地の人は気圧に慣れるために飲むようです。
たしかに、コーヒを飲んだ後のようにシャキッとしましたが…気のせいか、少々元気が出過ぎたような気もします。
音楽祭は大成功に終わり、今後も続いていくようです。

これから、30時間かけて、ボゴタから東京に飛びます。
ウィーンフィルのトップメンバーが集まった、トヨタ・マスターズプレーヤーズとベートーベンのトリプル・コンチェルトとのツアです。


March 17, 2013
Behind the Scenes of a Successful Concert
 

****************
パリは珍しく大雪が降り、真っ白です。


先日は葛飾でリサイタルがありました。
大好きな“寅さん”の映画が舞台になっている、柴又の近くにあるコンサートホールでしたが、演奏で訪れると観光の余裕がなくて…残念です。

今日はちょっとした〝舞台裏”のお話です。
東京で私のピアノを調律して下さる執行さんは、プロの中のプロ。
コンサートの当日の朝、練習のためホールに行くと、既にピアノを”ととのえて”待ってくださっています。

ピアニストと調律師の、音に対する「こだわり」と「趣味」が一致するのが理想的ですが、 執行さんは完璧な調律だけでなく、「 舞台の上のどこにピアノを置くか」にまで気を使って下さいます。

ピアノを置く場所が1センチ違うだけでも、また、下についている輪の方向が違うだけでもホールでの響きが変わります。

そしてホールにお客様がいるか、いないかで驚くほどガラッと変わる事があります。

今回のリサイタルでは、注目の作曲家であり、最近ベルギーで行われているエリザベート国際コンクールの優勝者でもある、 酒井健治さんの作品も演奏しました。

この曲を演奏するには、譜めくりをして下さる方が必要です。
この作業が見かけより大変。

めくるタイミングが早すぎたり遅すぎたりすると気になり、 演奏になかなか集中できなくなってしまいます。

友人のピアニストは、室内楽を専門に弾いていると必ず”フメクリストさん”にお世話になることになるので、本が一冊書けるほど色々な体験をしたと話していました。

めくり忘れるおじ様、めくる時に胸が邪魔になったグラマーな美女、めくる度にトウガラシみたいな真っ赤な何かがチラホラと見えるお姉さま(=爪の事でした)、デオドラントを差し上げたくなった青年…などなど。

今回、酒井さんの曲は、宮崎音楽祭で私の講習会に参加していた陣内さんに譜めくりをして頂きましたが、隣にいることすら忘れてしまうような、完璧な譜めくり、完璧なタイミングでした。

コンサート成功の舞台裏では、こんなふうに見えないところで、いろんな方々に助けていただいています!

調律師の執行さんと、マネージャーの小川さん。

この日、お二人は偶然にも同じズボンでした。


March 12, 2013
The Soul of Concert Halls
 

このホールの壁は過去100年間、この曲の名演奏をさぞ沢山聴いてきたことでしょうね…”
恩師でもある素晴らしいピアニスト、故タチアナ・二コラーエヴァと一緒に、あるピアニストのあまりぱっとしないショパンのポロネーズを聴いた後に、ポロっと落とした言葉でした。
場所はサル・ガヴォー。RAVELやDEBUSSYの初演が、数々おこなわれた劇場です。

歴史あるホールを訪れる時にはいつでもそうですが、いかに歴史的な演奏家がこれまでそこで弾いてきたかを思うと、その壁から、そこはかとないVIBRATIONを感じます。
そして、時代時代に生まれてくる新しい作品も、そういった場所を舞台に、世に出て行くのです。

逆に、東京初台にあるオペラシティーの武満メモリアルホールが完成した時には、お客さんが入る前に、ホールを満席にした状態で、初めて生の音を出す瞬間に参加させていただきました。
その時は小澤征爾先生の指揮で、新日本フィルハ―モ二ーとチャイコフスキーのコンチェルトを弾きましたが、新しいホールが生まれ、そして、これから色々な音楽を呼吸していくのだなぁと思うと、とても感動的でした。

どのホールにも自身の“歴史”があって、色々と個性があって、弾かせていただく時も、お客さんとして行っても、様々なことを感じます。
先日弾いた水戸芸術館は、磯崎新氏によって設計された、ホールのシンボルタワーが有名です。地震の時などに、NHK水戸放送局からの中継でいつも映る、銀色の塔です。
こちらのパイプオルガンは、日本人の手で作られたものとしては日本最大級ですが、東日本大震災の時に壊れてしまい、
およそ1年を経て、昨年4月にようやく修復が完了しました。


ここは小澤征爾先生とその同級生、そして〝仲間”の方たちと作り上げられた、
水戸室内管弦楽団の本拠地でもあります。また、沢山のリサイタル、室内楽や〝水戸限定版”の演奏会もあり、水戸在住の熱心な方だけでなく、東京や関西からわざわざ聴きにくるお客さんも多いようです。

この数年間、こちらのホールでは、小澤先生とのコンサートをはじめ、色々な企画で弾かせていただいています。素晴らしいスタッフのWELCOMEもあり、とてもアットホームに感じる場所です。
こちらで昨年からスタートしたシリーズが、『DEBUSSYプロジェクト』。
「DEBUSSYとフランスのバロック作曲家」
「DEBUSSYとショパン」
「DEBUSSYと同世代のラヴェル、ムソルグスキー」
そして、
「DEBUSSYとその後に続いたメシアン、武満」
と、4回のシリーズを行っています。

その第1回目が、昨年の3月3日でしたが、
歴史的な音楽評論家で、水戸芸術館の館長でもある吉田秀和先生が、わざわざ鎌倉からいらしてくださり、98歳とは思えないお元気な様子で、一心に聴いて下さいました。

吉田先生は1913年生まれ、DEBUSSYは1918まで生きていましたので、現代のようにインターネットがある時代だったら、もしかすると交流もあったかもしれません。なにか歴史の中に架けられたとても長いアーチのようなものを感じます。
> 大変残念ながら、吉田先生は『DEBUSSYプロジェクト』の第2回を迎える直前、昨年の5月に天に召されましたが、その後も、このホールで弾かせていただく時にはいつでも見守ってくださっているように感じます。
> 姿なき今は、ホールの隅々にまで宿り、これから水戸芸術館で演奏するすべての人とともに、その大きな歴史の中に生き続けていらっしゃるのだと、そう思うのです。


February 22, 2013
An Uncommon Announcement
 

パリの地下鉄に乗っていたら、こんな張り紙を見つけました:


『皆で落ち込む夜 第一回目』
会場:フォリー・ベルジェール(パリの19世紀終わり、ベル・エッポク時代からある、伝統的なミュージックホール)

有名な俳優さん、女優さん、歌手さんが、それぞれに知る限り一番悲しい歌を歌い、詩を読み上げる。
服は出来るだけ地味にする事を推奨。
抽選で2名様にフランス・ルールド(「ルルドの泉」で知られ、カトリック教会の巡礼地)の旅をご招待。

そして協賛が:
ティシュペーパのクリネックス(涙を拭うため?)・チョコレートペーストのヌテラ〔ヨーロッパではチョコレートを食べると、機嫌が良くなるといわれています)・お洗濯の時に使うソフタ―会社(なるほど、ふわふわの毛布や、セ―タにに身を包むと、気分がなごみますね)

人生を楽しむのが上手なフランス人は、この時期あらゆる理由で〝落ち込みやすい気分”も、ほんの少しユーモアを持って、芸術的に、そして、軽やかに演じきるのです!
フランスの作曲家DEBUSSYやRAVELも、悲しい表情を表す時、パトスに陥ることなく、どこか軽やかさを保っています。

ちなみに、フランスの有名な画家マネはこの〝フォリー・ベルジェールのバー”の絵を描いています。


February 11, 2013
The Ever-Important “Pause” in Music and in Life
 

パリから東京に着く日は大雪の予報があり、もこもこのコート、ブーツに襟巻、帽子をかぶって、お月さんに出かけるような格好で到着しました。

ところが東京は晴れ。気温も15度と、少々調子抜けしましたが、パリではめったにない青空を楽しみながら、リハーサルに行きました。

今回は、上野にある東京文化会館で,東京都交響楽団の素晴らしい音楽家たちとの室内楽。

演目はフランスの印象派の作曲家、ドビュッシー、ラヴェル、ショーソンでした。

一緒に演奏した弦楽四重奏団のニックネームは〝パウゼ・カルテット”。

練習熱心で有名なこのカルテットにとっては、その間にとる、パウゼ〔休憩)もとても大事。そしていつも、こんなふうに沢山の珍しいお菓子やおつまみが並ぶ、楽しいコーヒータイムなのでした。

そして!

尊敬申し上げていて、大好きなイケバナ・アーティストの假屋崎省吾先生から、楽屋に素晴らしいお花が届きました。

假屋崎 先生の展示会は、パリでも東京でもよく見せていただきますが、その天才的な、”美”に対する感性からはいつもインスピレーションを受けます。

少し紫みを帯びた、深みのある薄紅の薔薇「ショウゴエレガン」の心温まる芸術作品で、殺風景な楽屋は、パーッと明るく、文字通り〝花が咲いたように” なりました!

コンサート本番では、楽しく弾かせていただき、その後は、楽屋でシャンパンを開けて、打ち上げをしました!乾杯!! 

横山さん、小林さん、及川さん、吉岡さん、長谷部さん


February 8, 2013
Happenings at la “Festival Follles Journees de Nantes”
 

2月はいつも、ナントのフォルジュルネー音楽祭と共に訪れます!
日本でもここ数年ゴールデンウィークに東京国際フォーラムで行われ、数万人を集めるこの大音楽祭、もともとはフランスのナントで始まったのです。
今年で19年目を迎えますが、ますますの人気で、チケットが発売になる前の晩には、皆さん徹夜で並ばれるのだとか。
音楽祭もその人たちのために、コーヒーなどを配るようです!
(そういえば、今週パリのグラン・パレーで催された大人気のホッパー展では、あまりの来客に、最後の2日間を24時間休まず開館し続けたそうです。寒波の中、夜中に並ぶお客さんに、温かいドリンク、クッキー、ビタミン剤と…さすがファッションの町パリ、ハンド・クリームまで無料で配ったそうです!)

今回は、姉も初めてフォルジュルネーに参加して、ピアノ・デュオを演奏することになりました。

それが思いがけないハプニングに!
この音楽祭では、皆さんもご存知のように一日に何回も弾きます。 第一回のコンサートは14時。
前日、ドイツのミュンヘンでコンサートがあった姉は、当日、ブラッセル経由で、ナントに11時に着くはずでした。ところが、フライトが〝パイロットが病気のため、キャンセル”になってしまい、交通手段は電車に変更。
ナントの空港に着いたのが、な・ん・と!コンサートが始まる…10分前!  

とにかくマネージャー同士が連絡を取り合い、こちらは急遽マイクを持って、状況を客席にアナウンス。電車の中で舞台衣装に着替え、会場に駆けつける姉を待つ間、メシアンなど、ソロの曲を弾いて待ちました。
姉は15分遅れで、ようやくホールに到着。スノーブーツから、コンサート用の靴に履き替えて…ダッシュ!その後、プログラムとして予定していた半分を演奏することができました。
お客さんは「コンサートも、ハプニングも素晴らしかった」と、ハプニングをエンジョイしてくれました!これもフォルジュルネー、〝熱狂の日” です!

5月にはまた、同じ音楽祭で、東京と琵琶湖でも弾きます。是非いらして下さいね!


February 1, 2013
Japan in Paris?
 

1月は珍しくパリで雪が積もりました。そんななか、心を温めるためにパリ人は良く展覧会に出かけます。 今月、非常に印象深かったのは、なんとすべて日本からきたものでした!

ひとつめは、マドレーヌ広場のピナコテークで開催された「ヒロシゲ・ヴァンゴッホ展」。 建物のひとつでは、ふたりの絵を照らし合わせ、ゴッホがどれだけヒロシゲに影響されたかをみる企画。 ヒロシゲの木の繊細なラインが、”ゴッホ風”では、激しい響状になる…。

それはそれなりに興味深いものでしたが、その後にもうひとつの建物で見た、ヒロシゲの浮世絵がずらりとならんだ展示会は、特に感動しました。
十返舎一九の本に影響されて描いたといわれる東海道五十三次や、69の木曽街道、江戸の100の景色。以前から大好きで、その一部は本で見たり、原宿や長野県の浮世絵美術館などで見ていましたが、これだけのコレクションがパリで見られるとは、感動でした。
小さな版画の中のすべてのバランスが素晴らしく、限りない奥行きが感じられます。細かいところまでの気遣い、自然を瞑想するかのような神秘。そして、日本人のホスピタリティーや心の優しさーー日本人である私だからこそ感動の連続なのかと思ったら、まわりの外国人たちも感嘆していました。

ヒロシゲはシューベルトと同じ1797年生まれです。シューベルトは歌曲などを通して「旅人」の思いや考えを音楽をとおして表現していますが、日本ではヒロシゲが「旅人」をテーマに、日本の美しい自然を讃えていたのですね。

ふたつめは、ルーブル美術館で。彫刻家、新宮晋による映画が放映されました。 新宮さんは母方の親戚ですが、「風の詩人」といわれていて、関西空港の天井、銀座のエルメスの前、国立音楽大学の鐘などなど…世界中に、風に乗ってくるくるまわる作品があります。最近では、パリのチュルリー公園にも展示されました。

チュイルリー公園の、”光のシンフォニエッタ” 

新宮さんは幼い頃、お風呂に入っても水でいろいろ実験したり、外へ行くと風で遊んだそうですが、70歳になられた現在でも、友人の建築家、レンゾ・ピアノ氏曰く、彼は「7かける10歳」で、常に夢をもってそれを実現する人なのだそうです。
今の夢はブリージング・アース (風の力だけでつくる芸術センター)。風のエネルギーでーー展示場、劇場、コンサートホール、レストラン等があって、芸術家の天国みたいなところ。
実際、彼の作品の前に座って、風の向きや強さによって、いろいろなテンポで踊ったり潜ったり、飛んだりというように動くところを見ていると、すっかり自然と一体になっているのを感じます。
そしてこれまで「寒い」「強い」としか感じていなかった風も違うふうに「見えて」くるのです。
そういえば、見えないものを感じとる、自然の空間を感じとるーーということは、音楽にも共通することでもありますね!

http://breathing-earth.de/

http://susumushingu.com/

パリで新宮晋さんと 


January 1, 2013
HAPPY NEW YEAR!
 

I wish you from my heart a very inspired New Year!
At the beginning of each year, there are always new things which I plan to do.
This year, I decided to start writing a very simple diary – mon « petit journal » – to share with you the wonderful things I experienced through music… and all things arround music which are equally important.

Momo Kodama

To my Japanese friends:

明けましておめでとうございます。

皆様にとって、新しい一年がひらめきに満ちた年でありますよう、心からお祈り 申し上げます。

一年のスタートにはいつでも、「今年こそ!」と思うことが沢山ありますが、今 年はその中から、簡単な"お便り"を始めさせていただくことにしました。

色々な場所で体験したこと、思ったことなどを、この場で皆さんにお伝えできれ ばと思っています!

児玉桃 

外国育ちの姉と私に、母が「日本の伝統を伝えなくては」と、お正月にはいつもおせ ちとお雑煮を作ってくれます。
As my sister and I grew up in Europe, on New Year day, our mother would cook the traditional Japanese dishes to preserve our tradition.
Here are some examples of foods used in preparing Osechi-ryōri (御節料理 or お節料理), traditional Japanese New Year dishes:

Zōni (雑煮), a soup of mochi rice cakes in broth. First thing to eat on New Year day.
Konbu (昆布), seaweed – symbolizes joy
Gobō (牛蒡 or ゴボウ), burdock root – longevity
Kuro-mame (黒豆), black soy beans – health
Kazunoko (数の子), herring roe – fertility
Tazukuri (田作り), dried anchovies – abundant harvest

Each dish has its meaning-this is how 2013 started !

2014年の初仕事は、ドイツのユースオーケストラと共にまわったドイツ~イタリア・ツアーでした。 14歳から19歳の才能ある音楽家たちが、3週間寝起きを共にし、一緒に練習をして演奏するのです。もちろんその間、中学や高校は欠席しての参加です。
プログラムはメシアンの『異国の鳥』と、ブルックナーの『交響曲第6番』。
特にメシアンによる打楽器、管楽器とピアノのための曲『異国の鳥』では、演奏者一人一人が色々な鳥の鳴き声を演奏します。これは若い音楽家たちにとって、まったく新しい音楽の世界。
個人個人がよく準備をしてあった上、ベテラン指揮者であるマエストロ・ザゴルゼックの明確な指導もあり、リハーサルも大変スムーズでした。
ツアー開始の3日前に、それまでの練習の緊張をほぐすため、オールナイトのパーティが開催されました。察しのよいオトナなスタッフの皆さんは、事前にしっかりとお昼寝していたようですが、案の定、朝の5時まで盛り上がったそうです。
ツアー初日の前日には、音楽的にリラックスするため、この数日間で出来上がった室内楽グループの内輪の発表会があり、私も若い音楽家たちとメシアンの四重奏の中の一曲を演奏しました。
<演奏後>

ティーンエイジャーが90人も集まると、一日が24時間では足りません。日中は練習に集中、次の会場への移動、そして演奏会での緊張…と、慣れないことの連続で、どうしても睡眠不足になってしまいます。同行したお医者様も、24時間休む暇がありません。

さて、いよいよツアー初日の音楽会。場所はドイツの古都ボンでした。会場となるホールは、このベートーヴェンの街にある、自然博物館の中にあります。この建物の屋根が、なんと『異国の鳥』を弾くにはうってつけの場所!渡り鳥のための国際空港だったようです。

<音楽会のポスター>

この日はFM収録も入っていましたが、皆堂々と、活気のある演奏を披露しました。練習の成果を全て発揮してお辞儀をする若者の顔は、本当に嬉しそう。一緒に弾いていた私も、とても幸せな気分でした。

コンサート後半は、ブルックナーの『交響曲第六番』という、60分を超える大曲。若さ溢れる演奏に、客席は熱狂的な拍手が沸き起こりました。客席の中には、”バイオリンの3段目は私の娘よ!”と嬉しそうに話すお母さんや”ホルンのソロは素晴らしい、さすが我が息子!”と誇らしげなお父さんも。

その後、ドイツ、イタリアと、合計7か所で演奏をしましたが、その度に音楽的にも社会的にも貴重な経験を積んでいく音楽家の卵たちは、本当に恵まれていると思いました。
現在世界の舞台で活躍している、バイオリニストのテツラフ、ビオリストのツィンマーマン、そして、オーケストラで弾いているドイツ中の演奏家たちが、20年、30年前には、このユースオーケストラで弾いていた方々だそうです。
今回ご一緒した若い音楽家たちとも、きっと10年、20年後に、また別のかたちで、どこかの舞台で一緒に演奏することがあるでしょう。その日がくるのを楽しみにしています。

ツアー中、イタリアのトリノで突然MUJI (無印良品)のお店に遭遇。何だか嬉しい気分に。イタリアで見ると、このお店の雰囲気もイタリア風に見えるのは気のせいでしょうか?

イタリア、ベニス。モーツアルトが1771年に滞在した家。