”ドーフィネ地方(仏東南部)のアルプス、オワザンチク。ラ・メージュの高峰へ、その三つの氷河を目指して昇っていく…。”
20世紀を代表する作曲家の一人、オリビエ・メシアンの代表作の一つ”鳥のカタログ” 1曲目『キバシガラス』の解説文の冒頭です。 今年の夏は、まさにその、ラ・メージュで行われている「メシアン音楽祭」のオープニングコンサートで『キバシガラス』を弾きました。 朝起きて、ホテルの私の部屋の窓から見えた景色は まさしくメシアンの解説に出てくる景色そのもの! コンサート直前の、最高のインスピレーションとなりました!
July 31, 2013 ”目をきちんと開きましょう”というのは、取材で撮影される時には自分でも意識してきました。 そうです、これは確かにワタクシでございます! 自転車大国オランダということで、私も自転車で撮影に向かいましたが、あちらの自転車の大きさは、なんとオランダ人サイズのXXL!なかなか足がペダルに届かず大変でした。 カメラマンは、沢山の有名なクラシック音楽家を撮影しているオランダの写真家、マルコ・ボルググレーべさん。 撮る写真にもその暖かい人柄が出ていますが、同時に、音楽家一人一人の特徴、一瞬の表情をとらえ、さらにそれに合った雰囲気を見事に作り出します。 写真家のマルコ・ボルグレーべ氏と、ヘア・メイクのサンネさん マルコさんのサイト July 19, 2013 5月29日、パリのシャンゼリゼ劇場で、芸術の世界での大イベントがありました。 100年前のちらし 録音の風景 http://www.youtube.com/watch?v=VPwHD1XyPrQ その後日本に飛び、水戸芸術館で〝ドビュッシー・シリーズ”の最終回を、ホールの素晴らしいスタッフとお客さんに暖かく見守られた中で、めでたく終了、 岐阜の素敵なクララザールでのリサイタルを終え、パリに戻りました。
18世紀の僧院とその納屋を偶然見たリヒテルが”ここで演奏をしたい”と言った事がきっかけだったそうです。 さあ、これから夏休み!…といっても、次の勉強と、メシアンフェスティバルでの演奏が待っていますが…その前にアムステルダムへ!! May 29, 2013 「ピアニストの普段の生活は、どのような一日ですか?」 良く聞かれる質問です。 この春は海を渡る旅行が多く、色々な作曲家の違った曲を沢山弾いていました。 同じ音楽祭がびわ湖でも行われるのですが、ここは、美しい湖を臨むホールで、ゆったりとした温かい雰囲気です。 音楽祭の直後には東京文化会館で、マエストロ・インバルの指揮のもと、東京都交響楽団と共にモーツァルトのコンチェルトを演奏させて頂き、今は久しぶりにゆっくりとパリの自宅で過ごしています。 今年のパリの5月は寒く、春がいたずらっぽく、顔をみせては逃げていき、いまだに暖房を入れています。 私の家の前では、年に数回アンティークの市がひらかれます。 通りがかりの女性が豚の頭の置き物を手にとって”こんなもの、必要ないのに、買うなんて馬鹿げているよね。でもどうしても買いたいから買うわ。だからお安くしておいてね!”と値切ると、”チャーミングな人には、NOとはいえないよ!”なんて、いかにもフランス人らしい、会話が飛び交っています。 ピアニストの生活は、少なくともも私の場合、意外と普通の生活なのです! April 1, 2013 南米のボゴタから、32時間の旅行をして、やっと東京に到着、 翌日から名古屋でリハーサル。
ツアーで移動の新幹線で。ふだん何もない上の棚は、楽器で一杯です! April 1, 2013 日本で桜が咲いていた時期は、私にとってはベートーヴェンの時期でした。 リサイタル、室内楽、コンチェルトと”ベートーヴェンづくし”でしたが、1人の作曲家によるさまざまな形式、時代の曲を弾くことは大変興味深く、作曲家をグローバルに体験することが出来ます。 まずはコーヒーの国、南米コロンビアの首都ボゴタで、第一回国際音楽祭に参加してきました。 ホテルのエレベータのデザインもさすが。コーヒー豆が! リサイタルの他、大好きなバイオリニスト、オーギュスタン•デュメーさんとのデュオ、そして元気あふれるアムステルダム・シンフォ二エッタ(ファン・アルペン氏指揮)とのコンチェルトと、4日間毎日弾いていました。 オーギュスタン・デュメーさんと楽屋で 南米のお客さんはとても熱狂的。ホール中が笑顔とスタンディング・オベーションでとても盛りあがります。 音楽を演奏する私たちは、演奏する曲目について、つい色々と細かい事を考えすぎるところがありますが、コロンビアの人々のように、生まれて初めて生命力溢れるベートーヴェンを聴いた時の感動、その新鮮な気持ちこそが、何に対してももっとも大事なことだと思ってしまいました。 ボゴタは標高2600メートルと高いところにあり、到着した日は気圧に慣れるまで、皆フラフラしたり、めまいがしたりしていました。 コカ茶。 「これは麻薬のコカインではないですよね?」と冗談半分に言うと、「そうですよ!」との返事‼ これから、30時間かけて、ボゴタから東京に飛びます。 March 17, 2013 ****************
今日はちょっとした〝舞台裏”のお話です。 ピアニストと調律師の、音に対する「こだわり」と「趣味」が一致するのが理想的ですが、 執行さんは完璧な調律だけでなく、「 舞台の上のどこにピアノを置くか」にまで気を使って下さいます。 ピアノを置く場所が1センチ違うだけでも、また、下についている輪の方向が違うだけでもホールでの響きが変わります。 そしてホールにお客様がいるか、いないかで驚くほどガラッと変わる事があります。 今回のリサイタルでは、注目の作曲家であり、最近ベルギーで行われているエリザベート国際コンクールの優勝者でもある、 酒井健治さんの作品も演奏しました。 この曲を演奏するには、譜めくりをして下さる方が必要です。 めくるタイミングが早すぎたり遅すぎたりすると気になり、 演奏になかなか集中できなくなってしまいます。 友人のピアニストは、室内楽を専門に弾いていると必ず”フメクリストさん”にお世話になることになるので、本が一冊書けるほど色々な体験をしたと話していました。 めくり忘れるおじ様、めくる時に胸が邪魔になったグラマーな美女、めくる度にトウガラシみたいな真っ赤な何かがチラホラと見えるお姉さま(=爪の事でした)、デオドラントを差し上げたくなった青年…などなど。 今回、酒井さんの曲は、宮崎音楽祭で私の講習会に参加していた陣内さんに譜めくりをして頂きましたが、隣にいることすら忘れてしまうような、完璧な譜めくり、完璧なタイミングでした。 コンサート成功の舞台裏では、こんなふうに見えないところで、いろんな方々に助けていただいています! 調律師の執行さんと、マネージャーの小川さん。 この日、お二人は偶然にも同じズボンでした。 March 12, 2013 このホールの壁は過去100年間、この曲の名演奏をさぞ沢山聴いてきたことでしょうね…” 歴史あるホールを訪れる時にはいつでもそうですが、いかに歴史的な演奏家がこれまでそこで弾いてきたかを思うと、その壁から、そこはかとないVIBRATIONを感じます。 逆に、東京初台にあるオペラシティーの武満メモリアルホールが完成した時には、お客さんが入る前に、ホールを満席にした状態で、初めて生の音を出す瞬間に参加させていただきました。 どのホールにも自身の“歴史”があって、色々と個性があって、弾かせていただく時も、お客さんとして行っても、様々なことを感じます。
この数年間、こちらのホールでは、小澤先生とのコンサートをはじめ、色々な企画で弾かせていただいています。素晴らしいスタッフのWELCOMEもあり、とてもアットホームに感じる場所です。 その第1回目が、昨年の3月3日でしたが、 吉田先生は1913年生まれ、DEBUSSYは1918まで生きていましたので、現代のようにインターネットがある時代だったら、もしかすると交流もあったかもしれません。なにか歴史の中に架けられたとても長いアーチのようなものを感じます。 February 22, 2013 パリの地下鉄に乗っていたら、こんな張り紙を見つけました:
有名な俳優さん、女優さん、歌手さんが、それぞれに知る限り一番悲しい歌を歌い、詩を読み上げる。 そして協賛が: 人生を楽しむのが上手なフランス人は、この時期あらゆる理由で〝落ち込みやすい気分”も、ほんの少しユーモアを持って、芸術的に、そして、軽やかに演じきるのです! ちなみに、フランスの有名な画家マネはこの〝フォリー・ベルジェールのバー”の絵を描いています。 February 11, 2013 パリから東京に着く日は大雪の予報があり、もこもこのコート、ブーツに襟巻、帽子をかぶって、お月さんに出かけるような格好で到着しました。 ところが東京は晴れ。気温も15度と、少々調子抜けしましたが、パリではめったにない青空を楽しみながら、リハーサルに行きました。 今回は、上野にある東京文化会館で,東京都交響楽団の素晴らしい音楽家たちとの室内楽。 演目はフランスの印象派の作曲家、ドビュッシー、ラヴェル、ショーソンでした。 一緒に演奏した弦楽四重奏団のニックネームは〝パウゼ・カルテット”。 練習熱心で有名なこのカルテットにとっては、その間にとる、パウゼ〔休憩)もとても大事。そしていつも、こんなふうに沢山の珍しいお菓子やおつまみが並ぶ、楽しいコーヒータイムなのでした。 そして! 尊敬申し上げていて、大好きなイケバナ・アーティストの假屋崎省吾先生から、楽屋に素晴らしいお花が届きました。 假屋崎 先生の展示会は、パリでも東京でもよく見せていただきますが、その天才的な、”美”に対する感性からはいつもインスピレーションを受けます。 少し紫みを帯びた、深みのある薄紅の薔薇「ショウゴエレガン」の心温まる芸術作品で、殺風景な楽屋は、パーッと明るく、文字通り〝花が咲いたように” なりました! コンサート本番では、楽しく弾かせていただき、その後は、楽屋でシャンパンを開けて、打ち上げをしました!乾杯!! 横山さん、小林さん、及川さん、吉岡さん、長谷部さん February 8, 2013 2月はいつも、ナントのフォルジュルネー音楽祭と共に訪れます! 今回は、姉も初めてフォルジュルネーに参加して、ピアノ・デュオを演奏することになりました。 それが思いがけないハプニングに! とにかくマネージャー同士が連絡を取り合い、こちらは急遽マイクを持って、状況を客席にアナウンス。電車の中で舞台衣装に着替え、会場に駆けつける姉を待つ間、メシアンなど、ソロの曲を弾いて待ちました。 5月にはまた、同じ音楽祭で、東京と琵琶湖でも弾きます。是非いらして下さいね! February 1, 2013 1月は珍しくパリで雪が積もりました。そんななか、心を温めるためにパリ人は良く展覧会に出かけます。 今月、非常に印象深かったのは、なんとすべて日本からきたものでした! ひとつめは、マドレーヌ広場のピナコテークで開催された「ヒロシゲ・ヴァンゴッホ展」。 建物のひとつでは、ふたりの絵を照らし合わせ、ゴッホがどれだけヒロシゲに影響されたかをみる企画。 ヒロシゲの木の繊細なラインが、”ゴッホ風”では、激しい響状になる…。 それはそれなりに興味深いものでしたが、その後にもうひとつの建物で見た、ヒロシゲの浮世絵がずらりとならんだ展示会は、特に感動しました。 ヒロシゲはシューベルトと同じ1797年生まれです。シューベルトは歌曲などを通して「旅人」の思いや考えを音楽をとおして表現していますが、日本ではヒロシゲが「旅人」をテーマに、日本の美しい自然を讃えていたのですね。 ふたつめは、ルーブル美術館で。彫刻家、新宮晋による映画が放映されました。 新宮さんは母方の親戚ですが、「風の詩人」といわれていて、関西空港の天井、銀座のエルメスの前、国立音楽大学の鐘などなど…世界中に、風に乗ってくるくるまわる作品があります。最近では、パリのチュルリー公園にも展示されました。 チュイルリー公園の、”光のシンフォニエッタ” 新宮さんは幼い頃、お風呂に入っても水でいろいろ実験したり、外へ行くと風で遊んだそうですが、70歳になられた現在でも、友人の建築家、レンゾ・ピアノ氏曰く、彼は「7かける10歳」で、常に夢をもってそれを実現する人なのだそうです。 パリで新宮晋さんと January 1, 2013 I wish you from my heart a very inspired New Year! Momo Kodama To my Japanese friends: 明けましておめでとうございます。 皆様にとって、新しい一年がひらめきに満ちた年でありますよう、心からお祈り 申し上げます。 一年のスタートにはいつでも、「今年こそ!」と思うことが沢山ありますが、今 年はその中から、簡単な"お便り"を始めさせていただくことにしました。 色々な場所で体験したこと、思ったことなどを、この場で皆さんにお伝えできれ ばと思っています! 児玉桃 外国育ちの姉と私に、母が「日本の伝統を伝えなくては」と、お正月にはいつもおせ ちとお雑煮を作ってくれます。 Zōni (雑煮), a soup of mochi rice cakes in broth. First thing to eat on New Year day. Each dish has its meaning-this is how 2013 started ! |
2014年の初仕事は、ドイツのユースオーケストラと共にまわったドイツ~イタリア・ツアーでした。 14歳から19歳の才能ある音楽家たちが、3週間寝起きを共にし、一緒に練習をして演奏するのです。もちろんその間、中学や高校は欠席しての参加です。
プログラムはメシアンの『異国の鳥』と、ブルックナーの『交響曲第6番』。
特にメシアンによる打楽器、管楽器とピアノのための曲『異国の鳥』では、演奏者一人一人が色々な鳥の鳴き声を演奏します。これは若い音楽家たちにとって、まったく新しい音楽の世界。
個人個人がよく準備をしてあった上、ベテラン指揮者であるマエストロ・ザゴルゼックの明確な指導もあり、リハーサルも大変スムーズでした。
ツアー開始の3日前に、それまでの練習の緊張をほぐすため、オールナイトのパーティが開催されました。察しのよいオトナなスタッフの皆さんは、事前にしっかりとお昼寝していたようですが、案の定、朝の5時まで盛り上がったそうです。
ツアー初日の前日には、音楽的にリラックスするため、この数日間で出来上がった室内楽グループの内輪の発表会があり、私も若い音楽家たちとメシアンの四重奏の中の一曲を演奏しました。
<演奏後>
ティーンエイジャーが90人も集まると、一日が24時間では足りません。日中は練習に集中、次の会場への移動、そして演奏会での緊張…と、慣れないことの連続で、どうしても睡眠不足になってしまいます。同行したお医者様も、24時間休む暇がありません。
さて、いよいよツアー初日の音楽会。場所はドイツの古都ボンでした。会場となるホールは、このベートーヴェンの街にある、自然博物館の中にあります。この建物の屋根が、なんと『異国の鳥』を弾くにはうってつけの場所!渡り鳥のための国際空港だったようです。
<音楽会のポスター>
この日はFM収録も入っていましたが、皆堂々と、活気のある演奏を披露しました。練習の成果を全て発揮してお辞儀をする若者の顔は、本当に嬉しそう。一緒に弾いていた私も、とても幸せな気分でした。
コンサート後半は、ブルックナーの『交響曲第六番』という、60分を超える大曲。若さ溢れる演奏に、客席は熱狂的な拍手が沸き起こりました。客席の中には、”バイオリンの3段目は私の娘よ!”と嬉しそうに話すお母さんや”ホルンのソロは素晴らしい、さすが我が息子!”と誇らしげなお父さんも。
その後、ドイツ、イタリアと、合計7か所で演奏をしましたが、その度に音楽的にも社会的にも貴重な経験を積んでいく音楽家の卵たちは、本当に恵まれていると思いました。
現在世界の舞台で活躍している、バイオリニストのテツラフ、ビオリストのツィンマーマン、そして、オーケストラで弾いているドイツ中の演奏家たちが、20年、30年前には、このユースオーケストラで弾いていた方々だそうです。
今回ご一緒した若い音楽家たちとも、きっと10年、20年後に、また別のかたちで、どこかの舞台で一緒に演奏することがあるでしょう。その日がくるのを楽しみにしています。
ツアー中、イタリアのトリノで突然MUJI (無印良品)のお店に遭遇。何だか嬉しい気分に。イタリアで見ると、このお店の雰囲気もイタリア風に見えるのは気のせいでしょうか?
イタリア、ベニス。モーツアルトが1771年に滞在した家。
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